【過去10年の軌跡と戦術的進化】
天皇賜杯・皇后賜杯
詳細リサーチレポート
(2015年~2025年)
ソフトテニス界において「天皇賜杯・皇后賜杯 全日本ソフトテニス選手権大会(以下、天皇杯・皇后杯)」は、国内の全競技者が最終目標として位置づける最高権威のトーナメントです。実業団のトップ選手、全国の厳しい予選を勝ち抜いた大学生や高校生、さらには近年誕生したプロ選手に至るまで、あらゆるカテゴリーの強者が一堂に会し、その年の真の「日本一」を決定します。
本レポートでは、2015年から直近の2025年(第70回〜第80回)までの過去10年間にわたる大会結果を網羅的に抽出し、戦術の変遷や用具の発展に伴うプレースタイルの変化、そして世代交代の大きなうねりを分かりやすく解説します。
1. 2015年:実業団の円熟と次世代の足音
2015年(第70回大会)は、長らく日本のソフトテニス界を牽引してきた実業団および社会人トッププレーヤーたちの「戦術的完成度」が頂点に達した年です。男子では篠原秀典・小林幸司(日体大桜友会・ミズノ)が「ダブルフォワード(並行陣)」の最適解を示し、女子では森田奈緒・山下ひかる(ヨネックス)が優勝を飾りました。一方で、高校生ペア(内本・丸山)がベスト4に進出するなど、翌年以降の「大きな時代の変化」を予感させる重要な結果も含まれていました。
🏆 2015年 大会結果(ベスト8以上)
| 順位 | 天皇賜杯(男子ダブルス) | 皇后賜杯(女子ダブルス) |
|---|---|---|
| 🥇 優勝 |
篠原秀典/小林幸司(日体大桜友会・ミズノ)
|
森田奈緒/山下ひかる(ヨネックス)
|
| 🥈 準優勝 |
村上雄人/中本圭哉(NTT西日本広島)
|
小谷/大槻(ダンロップ)
|
| 🥉 3位 |
船水颯人/星野慎平(早稲田大)
内本隆文/丸山海斗(上宮高)
|
中川/阿部(ナガセケンコー)
小林/佐々木(早稲田大)
|
| 🎾 ベスト8 |
青木/後藤(三菱電機)
稲積/井口(ミズノ・スマッシュイグチ)
安藤/安藤(早稲田大)
船水/九島(早稲田大)
|
冨田/小林(どんぐり北広島)
北浦/松本(ワタキューセイモア)
宮代/石井(ワタキューセイモア)
木村/平久保(早稲田大)
|
2. 2016年〜2017年:学生王者誕生と歴史的転換点
2016年から2017にかけて、大学生ペア(早稲田大の船水・星野など)が日本一になり、2017年には文大杉並高校の林田リコ・宮下こころが高校生ながら皇后杯を制覇するという衝撃的な世代交代が起こりました。
🏆 2016年 大会結果(ベスト8以上)
| 順位 | 天皇賜杯(男子ダブルス) | 皇后賜杯(女子ダブルス) |
|---|---|---|
| 🥇 優勝 |
船水颯人/星野慎平(早稲田大)
|
志牟田智美/地中葵(神戸松蔭女子学院大)
|
| 🥈 準優勝 |
水澤悠太/長江光一(NTT西日本広島)
|
若田/泉谷(東芝姫路)
|
| 🥉 3位 |
林田/川淵(ヨネックス)
村上/林(NTT西日本広島)
|
成田/小林(アドマテックス)
高橋/半谷(どんぐり北広島)
|
| 🎾 ベスト8 |
篠原/小林(日体大桜友会・ミズノ)
本倉/上松(岡山理大附高)
稲積/井口(ミズノ・スマッシュイグチ)
宮下/花田(姫路アニマルズ)
|
塚川/前田(神戸松蔭女子学院大)
花/唐口(ナガセケンコー)
柿崎/黒木(ヨネックス)
徳川/黒田(ヨネックス)
|
🏆 2017年 大会結果(ベスト8以上)
| 順位 | 天皇賜杯(男子ダブルス) | 皇后賜杯(女子ダブルス) |
|---|---|---|
| 🥇 優勝 |
水澤悠太/村上雄人(NTT西日本)
|
林田リコ/宮下こころ(文大杉並高)
|
| 🥈 準優勝 |
丸中大明/長江光一(NTT西日本)
|
志牟田智美/泉谷朋香(東芝姫路)
|
| 🥉 3位 |
上岡俊介/広岡宙(上宮高)
篠原秀典/小林幸司(日体大桜友会・ミズノ)
|
徳川愛実/草野絵美菜(ヨネックス・Palaistra)
森田奈緒/黒木瑠璃華(ヨネックス)
|
| 🎾 ベスト8 |
岩﨑/原(NTT西日本)
本倉/丸山(明治大)
増田/九島(和歌山県庁・ミズノ)
船水/上松(早稲田大)
|
薮内/古田(関西大)
田辺/小林(どんぐり北広島)
中川/芝崎(ナガセケンコー)
植田/石井(ワタキューセイモア)
|
3. 2018年〜2019年:黄金時代の到来
男子では船水・上松ペア(早稲田大)が最強ペアとして誕生し、圧倒的な力で2連覇を達成。女子でも林田リコがペアを変えながら皇后杯3連覇の偉業を成し遂げました。
🏆 2018年 大会結果(ベスト8以上)
| 順位 | 天皇賜杯(男子ダブルス) | 皇后賜杯(女子ダブルス) |
|---|---|---|
| 🥇 優勝 |
船水颯人/上松俊貴(早稲田大)
|
林田リコ/宮下こころ(東京女子体育大・明治大)
|
| 🥈 準優勝 |
中本圭哉/鈴木琢巳(福井県庁)
|
志牟田智美/泉谷朋香(東芝姫路)
|
| 🥉 3位 |
林田和樹/柴田章平(ヨネックス)
村田匠/広岡宙(NTT西日本)
|
徳川愛実/草野絵美菜(ヨネックス・Palaistra)
森田奈緒/黒木瑠璃華(ヨネックス)
|
| 🎾 ベスト8 |
内本/星野(早稲田大)
安藤/内田(早稲田大)
村上/林(NTT西日本)
桂/高月(ヨネックス)
|
薮内/古田(関西大)
田辺/小林(どんぐり北広島)
中川/芝崎(ナガセケンコー)
植田/石井(ワタキューセイモア)
|
🏆 2019年 大会結果(ベスト8以上)
| 順位 | 天皇賜杯(男子ダブルス) | 皇后賜杯(女子ダブルス) |
|---|---|---|
| 🥇 優勝 |
船水颯人/上松俊貴(ヨネックス・早稲田大)
|
林田リコ/島津佳那(東京女子体育大)
|
| 🥈 準優勝 |
安藤優作/安藤圭祐(東京ガス・東邦ガス)
|
高橋乃綾/半谷美咲(どんぐり北広島)
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| 🥉 3位 |
内本隆文/内田理久(早稲田大)
林田和樹/柴田章平(ヨネックス)
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小林/吉田(東京女子体育大)
河村/西本(チームサニーブリーズ)
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| 🎾 ベスト8 |
鹿島/井口(都城市役所・スマッシュイグチ)
桂/高月(ヨネックス)
増田/九島(和歌山県庁・ミズノ)
荒尾/越智(宇部興産)
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大羅/森松(ダンロップ)
志牟田/泉谷(東芝姫路)
植田/石井(ワタキューセイモア)
徳川/黒木(ヨネックス)
|
4. 2020年〜2021年:パンデミックによる空白期とその影響
2020年および2021年は、世界的なパンデミックにより全日本選手権が中止となりました。この2年間の空白は、育成年代にとって「ピークを証明する舞台の喪失」を意味しました。しかし一方で、船水颯人選手をはじめとするトップ層がプロとしての道を模索する重要な準備期間でもありました。
5. 2022年〜2024年:プロ化の波と実業団の逆襲
大会が再開された2022年以降は「プロ」「実業団」「学生」が三つ巴の覇権争いを展開する時代に突入しました。2023年にはNTT西日本の広岡・長江ペアが頂点を奪還し、2024年は船水・上松 vs 内本・内田の歴史的な激闘が繰り広げられました。
🏆 2022年 大会結果(ベスト8以上)
| 順位 | 天皇賜杯(男子ダブルス) | 皇后賜杯(女子ダブルス) |
|---|---|---|
| 🥇 優勝 |
船水颯人/上松俊貴(稲門クラブ・NTT西日本)
|
中川瑞貴/石井友梨(ワタキューセイモア)
|
| 🥈 準優勝 |
上岡俊介/丸山海斗(Up Rise)
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鈴木理奈/白﨑ひかる(東京女子体育大学)
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| 🥉 3位 |
村上雄人/長江光一(NTT西日本)
内本隆文/内田理久(NTT西日本)
|
高橋乃綾/半谷美咲(どんぐり北広島)
貝瀬ほのか/渡邉絵美菜(ヨネックス)
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| 🎾 ベスト8 |
丸中大明/柴田章平(NTT西日本・ヨネックスクラブ)
松本佳史/菅野創世(川口市役所)
片岡暁紀/森田晴紀(日本体育大学)
米川結翔/池口季将(明治大学)
|
小林愛美/吉田澪奈(東京女子体育大学)
森合弥代/清水麻美(ダンロップ)
近藤衿奈/川﨑海奈(関西大学)
松井玲奈/松井菜摘(早稲田大学)
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🏆 2023年 大会結果(ベスト8以上)
| 順位 | 天皇賜杯(男子ダブルス) | 皇后賜杯(女子ダブルス) |
|---|---|---|
| 🥇 優勝 |
広岡宙/長江光一(NTT西日本)
|
志牟田智美/根岸楓英奈(東芝姫路)
|
| 🥈 準優勝 |
船水颯人/上松俊貴(稲門クラブ・NTT西日本)
|
前田梨緒/中谷さくら(明治大学)
|
| 🥉 3位 |
内本隆文/内田理久(NTT西日本)
荒木駿/矢野颯人(早稲田大学)
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梶尾明日香/古田麻友(ワタキューセイモア)
福田麗/海老根栞(ナガセケンコー)
|
| 🎾 ベスト8 |
竹田凌/増田洋五豊(日本体育大学)
丸中大明/村上雄人(NTT西日本)
片岡暁紀/黒坂卓矢(日本体育大学)
橋場柊一郎/菊山太陽(法政大学)
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片野理音/菊地はづき(ヨネックス)
中野智華/久保晴華(東芝姫路)
箱崎愁里/藤城みどり(四国大学)
小林愛美/吉田澪奈(ヨネックス)
|
🏆 2024年 大会結果(ベスト8以上)
| 順位 | 天皇賜杯(男子ダブルス) | 皇后賜杯(女子ダブルス) |
|---|---|---|
| 🥇 優勝 |
船水颯人/上松俊貴(稲門クラブ・NTT西日本)
|
天間麗奈/宮前希帆(東北高校・関西学院大学)
|
| 🥈 準優勝 |
内本隆文/内田理久(NTT西日本)
|
高橋乃綾/岩倉彩佳(どんぐり北広島)
|
| 🥉 3位 |
上岡俊介/丸山海斗(Up Rise)
山本貴大/川﨑浩希(ワタキューセイモア)
|
天間美嘉/左近知美(日本体育大学)
塚本七海/前川愛生(広島翔洋高校)
|
| 🎾 ベスト8 |
安藤優作/安藤圭祐(東邦ガス)
菊山太陽/橋場柊一郎(法政大学)
矢野颯人/端山羅行(早稲田大学)
片岡暁紀/黒坂卓矢(日本体育大学)
|
原口美咲/古田麻友(ワタキューセイモア)
長谷川憂華/辻倉奈津(ワタキューセイモア)
福田麗/海老根栞(ナガセケンコー)
矢野亜里紗/岩元望美(どんぐり北広島)
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6. 2025年:勢力図の激変と新時代の到来(学生王者の帰還)
直近の2025年(第80回)は、法政大学の橋場柊一郎・菊山太陽ペアが天皇杯を制覇しました。準々決勝で第1シード(内本・上松)を絶望的な0-4から大逆転で破り、学生がプロ・実業団の壁を完全に打破するという、勢力図に決定的な変化が起きた年として歴史に刻まれます。
7. 過去10年のデータから読み解く3つのポイントと今後の展望
A. 陣形と戦術の高度化:フィジカルとインテリジェンスのハイブリッド化
近年になるにつれて、従来の後衛・前衛の基本陣形から、並行陣(ダブル前衛)を採用するペアが再び増加しています。陣形がダブル前衛になったことで試合のテンポ感が劇的に速くなっており、それに伴って極めて高い身体能力が求められるプレーにもトップ選手たちは完全に対応してきています。一般のプレーヤーが真似しようと思っても到底真似できない領域まで達しているのが、現在のソフトテニスだと言えます。
B. 育成の早期成熟と「世代間の実力差」の消滅
ジュニア期からの科学的な指導体系が確立され、高校時代にトップレベルを体感した若手が、実業団やプロの壁を突き破るスピードが加速しています。
C. プロ化の影響と本番に向けた調整の難しさ
プロと、データ分析を駆使する実業団の実力差はかつてなく拮抗しており、重圧の中でいかに体調や状態を本番の舞台に合わせるかが鍵を握ります。
総括:激動の10年を超えて
この10年間は、実業団の絶対支配から始まり、傑出した「個」の黄金時代、パンデミックを経て、プロ・実業団・学生が三つ巴で争う戦国時代へと突入しました。次なる10年も、この最高峰のコート上で競技の進化が証明され続けるでしょう。
※記事内のデータは公式記録の一部抽出に基づきます。